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August 16, 2009

「あの日にドライブ」荻原浩

お盆休みというか2泊3日で海に出かけた。
いつもの海辺のホテルである。
旅のお供に文庫を2冊。1冊は「フォーティー 翼ふたたび」石田衣良・著(講談社文庫)、もう1冊は「あの日にドライブ」荻原浩・著(光文社文庫)である。
途中は車を運転しているので読めないので、読むのは旅先。いったい海に何しにいっているのかよくわからないが、旅にはやはり本である。

今回は、おじさん再生の本を選んだ。どちらも職場の上司とうまくいかず、勢いで辞めてしまったという40代の話である。
結論から言うと、1冊目「フォーティー」はできすぎ。引きこもり男を説得する話はちょっと泣かせたけど・・・。
「あの日にドライブ」は、素晴らしい。主人公の妄想癖がである。
どん底に落ちたとき「あの時、ああしていたら・・・」と思うのはしかたのないことだろう。
妄想でふくらんだ夢が砕け散るシーンのなんと恐ろしいことよ。この場面の衝撃を味わえただけでも充分読む価値がある。

荻原浩というと以前「ハードボイルドエッグ」という本を読んだ記憶があるのだが、内容をまったく覚えていない。フィリップ・マーロウ気取りの若い男が主人公だったような・・・。
こういう人を懐の広い作家というのであろうか。

August 08, 2009

池澤夏樹「キップをなくして」

児童書だという認識で読み始めたのだが、内容はなかなか深い。

読み終えて2日後、昔一緒に仕事をした人の配偶者が突然の事故で亡くなった。
葬儀に参列した私は、死について少し考えるのである。

(うわべだけの)話を聞いた限りでは、故人は、ちょっと注意すれば死なずにすんだのではないかと思われてしまう。葬儀の参列者からも「何で避けられなかったのか」という声が漏れ聞こえる。
だが、死者は戻らない。だれを責めるでなく、“しかたのないこと”と考えるしかないのである。

「キップをなくして」シチュエーションはかなり奇妙である。キップをなくした子どもは駅から出られなくなり、東京駅の中に住む“駅の子”になり、通学する子どもたちを守る仕事に就くのである。(家にはちゃんと連絡がいくそうである)

メインテーマはずばり“人の死”。(人の死についての答えは、未だ出ていないし、とうぶん出そうにないですね。いろんな宗教では勝手に独自の理論を展開してますけど)
この作品で描かれる“死後の概念”は、作家の想像上のものである。世界各地を住み歩いた作家が経験で得た死生観なのだろう。
なんらかの宗教観なのかもしれないが、宗教を神も仏も信じない私に「だれもわからないけれど、そういう死後の仕組みもあるかもしれない」と思わせる説得力がある。

この小説につじつまの合わない点はいっぱいある。しかし、それは、作品の質を落とすものではないし、そういうことを論じる作品ではない。

August 24, 2008

読書日記(8月)

家族旅行に行く前の日の晩、仕事場にトラブルが起きたので、後始末に出発直前まで掛かってしまい、持って行く本を選ぶことができなかった。
二泊とはいえ寝る前に本がないのは落ち着かない、旅先で書店を探し、買いに出かけた。
眼に付いたものを手に取る。買ったのは「iPhone 3G完全ガイド」というムック本と「空のオルゴール」中島らも著(新潮文庫)である。
中島らもは、最近トイレで氏とチチ松村さんとの対談を読み返しているので、気になっていた。
「今夜すべてのバーで」と「ガラダの豚」がどちらも心に残っている。
裏表紙の説明を読んで、名作「ガラダの豚」の再来を期待したのである。といっても、氏はすでに故人。(酔っぱらって階段から転落し、脳挫傷でなくなったと記憶している)とうぜん新作ではない。

期待は裏切られた。しっくりこないのだ。
どこがそうなのかも説明できる。コミカルさとシリアスさの比率が悪いのである。
仲間が殺された後、主人公と残った仲間が陽気に過ごしているのが悲しみの裏返しには見えない。
最後の決戦でも、合気道対マグナムなんて勝負のしようがない。どうして、わざわざ犬死にしに行かなくてはいけないのだ。(死なないのだけれど)主人公の考えが理解できない。

そういう点でこの本には辛い点をつけざるを得ない。
星2.5としておこう。

次に図書館から借りてきた、逢坂剛の「おれたちの街」を読む。
「カディスの赤い星」で直木賞を取ったことは記憶しているが、これまでほとんど読んだことはなかった。
短編(中編)が四編。もっとハードボイルドな作家だと思っていたのだが、予想に反して軽い話だった。でもまあまあ楽しめた。
よくわからない話(女性刑事がプロレスラーに変身する)があるところから、どうやら前作があるようだ。(調べてみたらシリーズの4冊目だった)
同級生が上司と部下になるという例は私の職場にもある。彼らがうまくいっているかどうかは知らないが、本の中の二人は、(表向きは、あまりよくないかもしれないが)そんなに悪くない。
前の話を読んでみるかどうか、読んでみてもいい気はしている。

もう一冊の「もの食う人びと 」辺見 庸著(角川文庫)は、読み始めてみるとどうやら前に読んだ気がする。たぶん沢木耕太郎が薦めていたのではなかったろうか。
パスして、読みかけていた子どもの「怪盗ルパン」モーリス・ルブラン著(岩波少年文庫)でも読むか。ルパンとホームズと少年探偵団は、小学生の頃にすべて読んだ記憶がある。

August 10, 2008

沢木耕太郎「凍」

沢木耕太郎が記録する最強の夫婦クライマー山野井泰史・妙子の決死の脱出行。
当初、雑誌「新潮」に掲載された際は「百の谷、雪の嶺」というタイトルだった。

壮絶な人生である。

好きなことに打ち込み、そのために努力し続ける人がいる。
酒ばかり飲んで、だらだらと過ごす自分が恥ずかしくなってくる。

June 06, 2008

明るい椎名家はいずこへ

「春画」というタイトルに惹かれ椎名誠の本を久しぶりに手に取った。
これまで、半アマチュア作家だった頃に書いたと思われる「哀愁の街に霧が降るのだ」(情報センター出版局.刊、上・中・下)から少なくとも20冊は読んでいる。

一時期、脳天気というか、ワイルドだけど悪じゃない椎名さんに傾倒していた。
私小説的な「岳物語」、「続岳物語」、「菜の花物語」はそれを読むために連載されていた集英社の機関誌「青春と読書」を定期購読していたくらいである。「怪しい探検隊」をまねて離島へ渡ったこともある。
余談だが、岳物語のサイン本を持っていたのだが、大学生時分に一回だけデートした女の子に貸して戻ってこなかった。返してもらおうと思ったときはすでに人妻だった。

そんな椎名氏が、バーで出会った鼻ピアスの若い女のアパートで朝を迎えたり、ストーカーの女(鼻ピアスとは別)に怯える日々を送るとは。存在も知らなかった娘と元少年の“岳は"アメリカに住んでいた。
妻は、チベットに傾倒し関係は冷え切っている。

こんな椎名氏は見たくなかった。

しかし、これが現実ではないのかという気もする。だれにも秘密はある。
私のアイドルである沢木耕太郎氏にも、池澤夏樹氏にも秘密はあるのだろう。
そして私にも・・・。

なぜ、椎名氏は“秘密"を書いてしまったのだろう。

May 26, 2008

先週の読書

読み終えたのは「(大活字)私の食自慢・味自慢カレーライス」嵐山幸三郎編(リブリオ出版)、「湘南ランナーズ・ハイ」倉阪鬼一郎著(出版芸術社)、そして「(同シリーズ)ラーメン」。読み始めたのは、「音楽を『考える』」(ちくまプリマー新書)茂木健一郎/江村哲二 著(本当は両氏の対談をまとめたもの)、それと椎名誠の「春画」。

「湘南・・・」は、まあおもしろく読んだが不自然な部分がない訳ではない。全250ページ中、150ページくらいでネタがわかってくる。計算されているのだろうか、それとも私が鈍いのだろうか?
読んで損したというようなものではない。元アマチュア・ランナーとしては楽しく読めた。
そういえば、茂木さんの話と“ランナーズ・ハイ"って「ドーパミン」というキーワードでつながっているな。

「春画」には、椎名一家の“その後"が記されているようである。私小説風であるが、登場人物はきっと脚色されているのだろうな。登場人物からモデルが知れれば、プライバシー侵害で訴えられかねない記述がが見られる。

May 20, 2008

大槻教授に花束を

“脳科学者"茂木さん(教授・センセイ)の本を調べていたら、同じ東大理学部出身の大槻教授が批判しているという記述を見つけてしまった。
自称“スピリチュアルカウンセラー"の江原啓之氏にすりよる文化人として名指しで批判しているのだ。
この本「江原スピリチュアルの大嘘を暴く」(鉄人社刊)はぜひとも入手しなくてはならない。

読み終えて胸がすっとした。
途中、ペテン師のくだらないまやかしを高名な学者がなぜ一つひとつ潰していかねばならないのかと疑問を持った。だが理由は最後の8ページに記されていた。
茂木さんのことはさておき、大槻さんは偉い。彼は自分の存在意義をかけて世のため人のために戦いを挑んでいるのである。
軽い本だったが熱い思いは伝わったぞ。

※もし、このページの読者に江原ファンがいたら、ぜひ氏を擁護するメールを送って欲しい。(大槻教授の受け売りでなく)意見交換するから。

May 04, 2008

読書スイッチ入る

“めざましテレビ”かなにかで藤沢周平の「山桜」という作品が映画化されたと耳にした。
もう20冊以上読んだ気がするが、このタイトルに聞き覚えはない。
調べてみたら「時雨みち」という短編集の中の一篇であった。早速アマゾンに注文。
この本の中には11の短編が収められているのだが、やはり「山桜」が最高。名作「蝉しぐれ」に通じる美しさがある。

調子に乗って“本屋大賞”伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」に突入。
数えてみると私にとって10冊目である。
主人公の性格が今ひとつつかめないまま読み進む。結局、(平日なのに午前2時までかけて)最後まで読んでしまった。
「なんとも人のよい男」というのが主人公の印象。彼の父親がどうして痴漢嫌いなのかがわからなかった点がすっきりしないが、痴漢を心底憎む父親に育てられたという点だけが重要なのだろう。行動力にあふれる(この物語のヒロインである)元彼女がまたいい。こういう切ない話にちょっと弱い私である。

子どもにつきあって図書館へ。
新刊書コーナーから佐藤正午「アンダーリポート」を借りる。
佐藤正午はデビューしてからしばらく読んでいた。4、5年前に「Y」と「ジャンプ」、「ビコーズ」を読んだ記憶がある。
佐藤氏は“情けない男を書かせたら日本一”というほめ言葉(?)をもらっているそうだが、今回の主人公はあまり情けなくない。主人公は生きていく意欲を失った中年(40歳代前半)。あるきっかけから15年前に身近で起きた事件前後の記憶をひもといていく。
彼を突き動かしたものはいったい何だったのだろうと疑問に思い、(最後まで読んで)また1,2章を読み返す。理由がおぼろげにわかって空恐ろしくなってしまった。

本を返しに行って今度は「ネットオークションで騙す」というノンフィクションと大沢在昌の「標的走路 レスリーへの伝言」を借りてきた。飲み会も多いし、もうへろへろになりながら読んでいる。

追記
ネット・・・は、作家デビュー作とは思えないほどうまく書けている。スピード感というかテンポがいい。自分にも起こりえたような話でこれも怖い。
要するに主人公は、生け贄の山羊にされたのだ。しかし彼に逃げ道はなかったのである。
彼は、結果的に前科者になったけれどこの本で釈明できてよかった。
恥ずかしくて隠そうとしたことなどを正直に述べているところが皆に評価されるのではないかと思う。

大沢在昌は、(今読んでいるところなのだけれど)いわゆる大衆(おじさん向け)小説である。
しかし、ハードボイルドの枠は外していない。
こんな娯楽小説を読む余裕はないのだけれど、読むに値しない本でもない。
感想は読了してから。


February 17, 2008

ミステリ仕立て「死神の精度」

伊坂幸太郎「死神の精度」(文春文庫)を読む。
さりげない台詞や物にヒントが隠されているのだが、謎解きと考えて読んでいないので最後に「なるほど!」と思うのである。
そんなことの繰り返しであっという間に読了。

February 11, 2008

2月の読書

1月にあまり本を読まなかったので、今月は、とりあえず買って枕元に置く。

まず、新聞の読書欄で読者が薦めていた「パパ・ユーアクレイジー(新潮文庫)」W.サローヤン(著)、伊丹十三(訳)と「バンコクの妻と娘 (文春文庫)」近藤紘一(著)。
「パパ・ユーアクレイジー」は、おもしろいような、そうでないような…。少し退屈で毎晩読みながら眠ってしまった。
「バンコク…」の表紙には家族3人の写真が…。“妻”は「サイゴンから来た妻と娘」のイメージからは想像できない美人じゃないか?これは、もう少し寝かせておいて、文藝春秋を手に取る。
芥川賞の川上未映子「乳と卵」である。
あんまり純文学というのは得意じゃないのだが、敬愛する池上夏樹も宮本輝も山田詠美も“芥川賞”受賞者でその審査員なのである。
短いこともあってまあ退屈せずに読み終えた。女の人もいろいろたいへんであるな。
この号には松本隆の文章もあって得した気分になった。

昨日は子どもが返却に行くのでつきあった図書室で村上龍の「オーディション」を30分ナナメ読み。
この本には「乳と卵」と対照的な“完璧”な女性が出てくる。
でもこれはサイコホラー。こういうのは苦手だ。

今月はあと、「釣り師の休日」という英国の釣りをテーマにしたアンソロジーと文庫化された伊坂幸太郎の「死に神の精度(文春文庫)」を読むつもりである。

October 28, 2007

伊坂幸太郎と藤沢周平の関係とは

昨日、読む本がなくなったので書店に行った。
目当ては、伊坂幸太郎と藤沢周平である。
伊坂氏の本は、先日デビュー作「オーデュポンの祈り」を読んだ。
本の紹介に“言葉を話す案山子(かかし)が…”なんて書いてあったので敬遠していたのだが、(文庫に)読むのがなくなってしまった。
ところが、予想に反しておもしろかったのである。氏の才能に感心した。

今回買おうと思っていたのは、伊坂氏の「陽気なギャングの日常と襲撃」(新書版)と藤沢周平の「風の果て」だった。代表作の一つなのに「風の果て」はまだ読んでいなかった。じつはNHKのドラマが始まったので気になっていた。これまで映像化された作品はほとんど見る前に読んでいたのだ。

荷物になるのでとりあえず「陽気なギャング…」だけを購入したのだが、この2作品には、ある共通点があることに気がついた。

映像作品のどちらにも佐藤浩市が主役として出演しているのである。
陽気なギャングが地球を回す
風の果て
「陽気なギャング」の方は評判が悪いようなので見る可能性は低い。だが、(私の住む地方で上映がなかった)アヒルと鴨のコインロッカーは、ぜひ見てみたいと思っている。
この作品、映像はまだ見てないが、本はこのページを見てくれているすべての人に読んでもらいたい名作である。映像化が困難だと思われる部分をどう処理してあるか、とても気になる。

October 10, 2007

定本 岳物語

「岳物語」、「続・岳物語」と読み返した私はamazonのカスタマーレビューを見て、「定本 岳物語」という本が出ていることに気づいた。
2冊を合わせ加筆・再編成し42枚のあとがきと岳くんのエッセイが収録されているらしい。
これは、買わねばならない。

2冊を読んで気になったことがある。岳くんはこんなこと(少年時代のはずかしいエピソード)をを書かれてへいきなのだろうか?
放任主義で育てられた子どもは一人前の男(これは問題発言)になれたのだろうかということ。

※もうすっかり、酔っぱらってしまったので続きは後日。

September 25, 2007

最近の読書

相変わらず、ジェイムス・クラムリーと伊坂幸太郎。
前者は、C・W・シュグルーが主人公の「友よ、戦いの果てに」、後者は「重力ピエロ」である。
年齢のせいか翻訳ミステリは読むのがつらくなってきた。登場人物が覚えられない。
カタカナは文字としてキャラクターが少ないのである。

クラムリーの小説には主人公が2人いる。どちらも私立探偵で飲んだくれの薬物常用者。名をミロドラゴヴィッチとシュグルーと言う。性格も似ているのだが、本作の主人公シュグルーの方が、私には好ましく思える。
どちらもむちゃくちゃなことをするのであるが…。

伊坂氏の初期作品「重力ピエロ」は、少しシリアス。“そういう話は明るくする"というようなことを本文にも書いてあるのだが、全体的に暗めである。
主人公のとその弟の(奇妙な)行動がきちんと説明してあるが、やや丁寧すぎる感もある。

手持ちの本が無くなったので、(たぶん)20数年ぶりに椎名誠の「岳物語」を手に取る。
偶然か必然か?
今、手にするべき本であった。目に留まってよかった。

August 25, 2007

翻訳ミステリ

最近、ジェイムズ・クラムリーの本を読んでいる。
「酔いどれの誇り」「ダンシング・ベア」「明日なき二人」と来たが、読んでいて登場人物がわからなくなることが多い。
文庫では前の方に登場人物の紹介欄があるのだが、出てこない人も多くて…。

今読んでいるのは伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」。
この本も登場人物が多いが、なんとかわかる。漢字は英字に比べてキャラクターが豊富だからだろうか。
(今みたいに)年を取る前から記憶力が低い私である。

June 30, 2007

酔いどれの誇り

ジェイムズ・クライムリーの「酔いどれの誇り」を読む。

もうどうしようもなく、だらしないバツ2のアル中探偵ミロ39歳。
ひと目ぼれした依頼人のために動き出す。「僕の昼の代わりにきみの夜をくれ」なんて言って断られたのに。
私の説明だととても軽い話のように思えるかもしれないが、そうではない。
途中、ヒッピーの女の子といたしたりするのだが、その時点では真剣なのだ。
もう身も心もぼろぼろになって、それをアルコールと薬物でごまかしてさらにぼろぼろになっていく。

男はやっぱり、やさしくなければ生きていけないのね。
結末に涙する私であった。

※ハードなので女性は読まない方がよいと思います。

March 25, 2007

新訳「ロング・グッドバイ」

先週日曜の朝刊の読書欄の週間ベストセラー(東京)の1位は、村上春樹・新訳のチャンドラー「ロング・グッドバイ」だった。これはと思い、さっそく購入。
今週はベストテンに入っていない。一部の熱狂的マニアがパッと買ってそれで終わりなのだろうか。

読みかけの本が数冊あるのだが、小説ではないのでこちらに移る。
まだ30ページ目位なのだが、行間から匂い立つものがある。(別にくさいにおいではない)
ハードボイルド小説は文体を楽しむものでもあるのだ。
幸いなことにストーリーは以前読んでいるはずなのにまったく覚えていない。
先を急がず、舌の上で転がすように味わいながら読み進めたい。
Longgoodby

March 17, 2007

寝ても覚めても本の虫

「寝ても覚めても本の虫」児玉 清 著(新潮文庫)を読んでいる。
児玉氏は有名な役者なのだが、読書家としても有名だそうである。(デイック・フランシスの最新刊で解説を書いていたし…。しかも原書を読んでいる)

私の読書の師匠はたくさんいる。大学時代にバイトしていた喫茶店のマスターからは社会派と呼ばれるミステリー作家を教えてもらった。高木彬光、西村京太郎、梶山季之…。
その頃私は内藤陳さんの存在を知った。「読まずに死ねるか」(集英社刊)である。
私はこの本をバイブルとして、冒険小説の世界に入った。
純粋なミステリ(エラリイ・クイーンやアガサ・クリスティ)しか知らなかった私にとって、ギャビン・ライアルやジャック・ヒギンズ、アリステア・マクリーンがみせる男の世界は、もう後戻りできないほど魅力的だった。

児玉氏は私をまた新たなる世界へ誘ってくれるのだろうか。
Honnomushi

March 08, 2007

「今日は早く寝ろう」虹の谷の五月(船戸与一 著)

今朝は睡眠不足だった。
「虹の谷の五月」(船戸与一 著) を昨晩読んでいたからだ。
前回はちょっと重い(ハードな)本を選ぶはずだったのに、妙に軽い本を読んでしまった。
船戸与一ならば、(絶対に)間違いない。
M16が火を噴き、死体が累々と横たわるのは必至なのである。
日曜日から少しずつ読んでいたのだが、昨晩はほぼ半分を一気に読んだ。
読み終えたのは、午後1時過ぎ。
興奮して、2時過ぎまで眠れなかったのだ。

何が正しいのか、人はどうあるべきなのかを考えさせられた。
“あるべき大人”へと成長していく主人公を見習って、私も清く正しく生きていきたい。

もう眠くてしかたない。少しギターをさわって今日は早く寝ろう。

March 03, 2007

ハードボイルド・エッグ(萩原浩)

ハードボイルドの意味(本質)がわかっていない人にも楽しめるだろうが、知っていればより楽しい。

フィリップ・マーローに憧れる主人公の自称探偵(33歳)は、よく「ちょっと喋り方がヘン」と言われてしまう。
彼がハードボイルドな生き方をするようになった背景もうまく描かれていると思う。
片桐綾という名の80過ぎの老婆をアシスタントに雇う羽目に陥り、ネコやイグアナを捜す日々を描く前半は完全にコメディー。色っぽい依頼人とのラブシーンを期待してしまう点など「どこがハード・ボイルドなんだか」と読者に突っ込まれてしまう。

後半はちゃんとミステリーになっており、手に汗も握る。
お約束の美しいヒロインも登場するが、悲しいかな友人の妻である。

ハードボイルドにありがちな終局に向かうのであるが、最後はホロリとさせられてしまう。
この終わり方には疑問が残るが、うまく書けていると思うし、読んで損はない。星3つ半はあげたい。

※ハードボイルドとは“意気地無し”のことではなく、“ええ格好しい”のことでもなく、「据え膳食うのは男の恥」と考えるような、自ら定めた規律に従い行動する男の物語のことだと私は思う。

クレーターと巨乳(藤代瞑砂)

旅日記(写真集?)「ライド ライド ライド」は、沢木耕太郎の「深夜特急」と対極をなしている。
沢木が頑なまでにストイックなのに対し、藤代は旅しながら乗って乗って乗りまくるのである。(女性に…)

写真家として女体を探求し続けた藤代が若い女性の一人称で描き出そうとしたものは…。
私にはわからない。

前にも言ったが「できれば連載当時のエドツワキのイラストとともに読みたかった」というのが正直な気持ちだ。

※ぜんぜんレビューになっていませんね。

February 15, 2007

椿山課長の七日間

いやあ、おもしろかった。
(エロ親父の)おじさんがいちばん興味を持ったのは、椿山和昭(46歳)が妙齢(39歳だけど)の美女としてよみがえったシーンである。
24時間×3日間しか現世にいる時間は残っていないのに、椿山氏がまずしたこととは…。
ご想像のとおりである。

浅田次郎氏の作品はあまり読んだことがないのだが、さすがベストセラー作家。つぼを押さえている。(不覚にも)引き込まれてしまった。このへんの(つぼの)押さえ方は難しい。(すれた)読書家には、ベタな手口と思われてしまうかもしれないのだ。そういう見方をすれば私は素直な方だろう。

なんと、ここのところ読んだ3作が全て映画化されている。
まだ一つも見ていないが、人物設定がみな微妙に違うようである。それが表目に出ているか裏目に出ているか…。まあ、見てみることにしよう。

仕事から帰ったらアマゾンに注文した本が届いていた。
タイトルがすごくて人前ではカバーをしないと読めないかもしれない。「クレーターと巨乳」なのである。(連載当時は「誰も死なない恋愛小説」だった)
著者は(アイドルも撮る)カメラマン藤代冥砂。
2002年ごろSWITCH(スイッチ)に連載されていた。早く単行本が出ないかとを首を長くして待っていた。
連載当時のイラストは、(あの原田知世のだんな)エドツワキ(首の長い女性のイラストで有名)だったのだが、残念ながら単行本は違うみたい。

January 31, 2007

1月の読書記録

1.目黒考二著「新・中年授業」(本の雑誌社)
読んでいる途中。WEB本の雑誌でも読めるので買う必要はなかったかもしれない。目黒さんは性的な描写に敏感だということが目に付く。世のおじさんは皆(少なくとも私は)そうなのかもしれないが…。

2.盛田隆二著「ありふれた魔法」(光文社)
目黒さんが前出の本で薦めていた。おじさんは自由にできるお金を持つと危ないということを学ぶことができる。物欲くらいにとどめておいたほうがよろしそうである。

3.町田康著「パンク侍、斬られて候」(角川文庫)
この著者は2冊目。筒井康隆を彷彿させるが、もっと支離滅裂。高橋源一郎が解説で「嫉妬する」と書いていたが、私には理解できない世界観である。しかし、長く印象に残るかもしれない。もう(氏の作品を)手に取ることはないだろう。(採点不能)

4.デイック・フランシス「再起」(早川書房)
86歳の元騎手ミステリ作家、待望の(6年ぶり)新作。犯人に思い当たる理由がミステリにしては弱い。犯人と主人公の対決シーンも使い古されたパターンだが、さすが大御所、70点以上はあげたい。
※解説の児玉清が原書を読んでいるところがすごい。

5.植草甚一「ぼくの好きなジャズマンたち」(晶文社)※絶版
ジャズ研究のためオークションで入手。著者は(私の記憶が正しければ)60歳くらいからジャズを聴き始めているJJ氏。誰にも影響されず独自の評論をしているはず。CDを聴きながらじっくり読んでみるつもり。

January 14, 2007

引退していなかったデイック・フランシス

新聞の書評欄を見て驚いた。
「デイック・フランシスが新刊を出してるー」。

彼はとうの昔に引退したのではなかったか?
クリスマスに競馬シリーズの新刊を手にできなくなって久しいのだ。

なんと6年ぶりのまさに“再起”。(新刊のタイトルが「再起」なんですね)
おまけに主人公が私同様多くの読者が愛してやまないシッド・ハレーとくれば、もう2千円なんて価格は関係ない。

ちなみにデイック・フランシス御年86歳。訳者が変わっているのはもしかして…。
とにかく直ちに注文だ。
Saiki

January 06, 2007

忙しいほど読書したくなる

新年早々忙しい。
ゆっくりする暇はぜんぜんないのだが、“WEB本の雑誌”で勧めていた本を買ってしまった。ついでに本の雑誌社刊の目黒考二著「新・中年授業」も買った。

今年の1冊目は、WEB本の雑誌の目黒考二の中年授業(第90回)で紹介されていた盛田隆二著「ありふれた魔法」(光文社)。同年代のおじさんが遭遇する幸・不幸を描く、言わば大人のメルヘン。
妻には読ませられない本なのである。

2冊目は町田康著「パンク侍、斬られて候」(角川文庫)だ。
もしかしたらハズしているかもしれないな。
もはや、睡眠時間を削るしか読書する余裕はない。

※目黒考二は「本の雑誌」の元発行人であり、本のジャンルに応じて、藤代三郎、北上次郎という名でも書評を行っている。椎名誠著「わしらは怪しい探検隊」(角川文庫)では、“釜焚き目黒”と呼ばれている。

December 04, 2006

最近読んでいる本

秋の読書で疲れ、最近小説を読んでいない。
パソコンの弟子から借りた本、(青春小説というのかな?)を最後に中断。
それなりにおもしろく読んだのだが、時間を無駄に使った感も否めない。

2週間ほど前に大型ショッピングセンターの本屋を覗いたら、矢野顕子が微笑みかけていた。
私は彼女の大ファンなのである。迷わず購入した。

オークションで10年前に発行されたパット・メセニーが特集された“ジャズ批評”も購入。
知っている人は知っているが、二人は“友人”なのである。

iTunesで調べると矢野顕子のアルバムは20近く持っているのに、パットの方は7枚である。研究のために数枚買うことにする(2枚注文中で、あと1枚買うつもり)。

秘密だが、矢野顕子の"It's For You"(作曲:パット・メセニー)は私の大切な曲である。

Hon

October 22, 2006

今週手にした本「博士の愛した数式」

最近、休日には自宅近くの図書館に行く。
返却のついでに借りるという状況が続いているのだ。
東野圭吾〜宮本輝〜藤沢周平と進んできた。さて今週は…。

ア行の作家から眺めはじめて、小川洋子「博士の愛した数式」で目が止まった。
たしか”本屋大賞”を取った作品だ。
「妊娠カレンダー」という題名は浮かぶが、たぶん1冊も読んだことがない作家である。
交通事故の後遺症で80分しか記憶が持たない老博士とシングルマザー家政婦の物語である。

文章は結構軽く、すいすい読んでいける。(相変わらず頭は痛いが…。※前の記事を参照ください)
ちっとも、どろどろしたところがなく私好みではない。
しかし、深いのである。
(不親切に)説明を抑えているせいで、読者に想像させるのである。見えない背景を。
そして、考えるほど、物語は味わい深いものになっていく。(頭が痛くて、数式について思いを巡らす余裕はなかったが)

主人公は、なんのロマンスもなくルート(子どもの愛称)を育て上げたのだろうか?(といっても、物語が終わった時点で彼女は40歳そこそこにしかなっていないのだが)
そんな下世話なことばかり考えてしまうところは、改めるべきだと思っている。

September 21, 2006

アンソロジー「贅沢な恋愛」執筆陣の音楽ジャンル

実家の書棚に角川書店刊の「贅沢な恋愛」という単行本を見つけ、手に取った。
こんなのだれが買ったのだろう。
執筆陣を見てみると北方謙三、村上龍、山川健一、山田詠美など、好みの作家が名を連ねている。
きっと以前私が買ったものだろう。
北方謙三はデビュー作からしばらくはまっていた。高校生か大学生の頃、某ホテルで行われた講演会に行き、サインをもらった記憶がある。初期の頃はすてきなハードボイルド小説を書いていた。(今は時代物?)
村上龍も少し読んだが、青春もの以外は、あまり好みでない。
山川健一はMacユーザとして有名なので興味を持ち少し読んだ。北方氏や村上氏みたいく成金っぽくないところがいい。ロックな人だ。
そして山田詠美。エッセイや自叙伝風の小説を読むとかなりむちゃくちゃな人のように思えるのだが、じつは「男の子」の感情を描くのが非常にうまい。("Pay Day"でも本書収録の「雨の化石」でも、主人公の少(青)年は、年上の人を好きになってしまう。彼女の音楽はロックでなく、本のタイトルにもあるとおり”ソウル”かな。
ちなみに村上氏はラテン(イベントのプロデュースとかやってます)。北方謙三はハードボイルドだがらジャズと言いたいところだが、時代物と成金趣味で演歌かな。

※M町のH田くんいつも読んでくれてありがとう。

September 11, 2006

小学校高学年で夢中になった本

江戸川乱歩の少年探偵団シリーズは読破した。アルセーヌルパンも。シャーロックホームズも。
探偵小説に夢中になった小学生の私は、”探偵”の文字に惹かれ「名探偵カッレくん」という本を手にした。
(著者のアストリッド・リンドグレーン(スウェーデン)は、「長くつ下のピッピ」をはじめ多くの児童文学を残している著名な作家)

一見ありえそうな巻き込まれ型探偵小説のカッレくんシリーズ(全3巻)に幼い私はたちまちしびれてしまった。
しかし、どんなに名探偵を気取っても、(欲しくてたまらなかった)大きな虫眼鏡も買えなかったし、宝石泥棒や殺人犯、産業スパイは現れなかった。こそ泥さえも。

探偵が現実的でないと気付いた私は次に冒険ものに目をつけた。
アーサー・ランサム(英)のツバメ号シリーズ(全12巻)である。学校の図書室で見つけ夢中になった。今度はイギリス湖沼地方を舞台とした海賊ごっこの話である。いつか小さな帆船を手に入れたいと夢見た。(現実には小さなカヌーをなんとか手に入れた)

これらの本を成人してから少しずつ買い求めることにした。
しかし絶版になっていて、なかなか揃わない。
オークションでこまめにチェックし、だぶりで余分に買ってしまったが、全巻そろえることができた。(いわゆる金に糸目をつけない”大人買い”です)

けれど、ようやく手に入れることができた本なのに読んでもあの頃のトキメキは得られないのである。
きっと、”キタナイオトナ”になってしまったせいなのだろう。

「”少年の心”を持った大人なんて本当にいるのだろうか?」と自問する。私だけが”汚れてしまった”と思いたくないのだ。「大人になれない(けんかっ早い)やつ」とはよく言われるのだけれど…。

でも、もう一度だけ素直な気持ちで読み返してみたい。だめでも子どもが思いを引き継いでくれると信じたい。

September 03, 2006

はまってしまった「空中ブランコ」

直木賞を受賞した奥田英朗の「空中ブランコ」にはまってしまった。
シリーズ前作の「イン・ザ・プール」から読んだのだが、第2弾のほうが面白かった。
中でも「義父のズラ」は最高!。私も会議中、明らかにカツラとわかるひとの頭をはぎたくなる衝動に駆られることがある。「やったらクビかもしれないだよなー」と、思いとどまるが。
はたから見るとばかばかしい悩みで神経症になっている変な人たちが次々と登場するのだがなぜか笑うことができない。
患者の苦悩がわかっているのか、いないのかわからない医者がいちおう主人公ということになるのだろうか。
いや違う。主人公は患者たちだ。
滑稽な症状に悩まされている患者たちが愛おしく思えてくるから不思議。
物憂げで色っぽい看護婦さんがなんとも魅力的で香りのいいスパイス(じゃなくて香水だけど)となっている。
こういうエンターテイメントで大笑いするのもたまにはいい。

May 14, 2006

先週入手したもの

先週入手した、本・雑誌は次のとおり。

1.イブニング(マンガ雑誌)
2.週間モーニング(マンガ雑誌)
3.Mac Power 5月号
4.川崎和男 ドリームデザイナー(単行本)
5.新潮四月臨時増刊 宮本輝(平成11年4月1日発行のMook。中古で入手)

1.2.はいつも買っているもの。気になっているのは、モーニングの「ピアノの森」と「神の雫」。
3.はアサヒパソコンが休刊になったので買ってみたのだが、普通のパソコン本とは趣を異にしている。パソコン雑誌というよりマックとくらしを共にする人のための本である。宗教の本と言えないこともない。"Apple Design"の文字とかっこいい表紙の写真に引き寄せられた。
4.は「デジタルなパサージュ」を読み終えそうなので買った。(新品)
5.はこんなのがあると最近になって気付き、即座に入手した。(もちろん中古)愛読する宮本輝の研究書(?)である。※ちょっと読んだら、宮本氏が前川清の「雪列車」が好きらしいので笑ってしまった。

March 27, 2006

俵万智「トリアングル」を読む

俵万智はじめての小説「トリアングル」を読んでみることにした。
事前にいろんなレビューを読んでみると「性描写が過激」なんていうのが結構あって、期待させる。
で、その性描写であるが「まあ普通なんじゃない」という感想。(こういう部分を意識しすぎる人の方がスケベだろう)

不思議なタイトルだが、トリアングル=鳥アングル(鳥の視点)だそうである。三角関係=トライアングルとかけてあるのかもしれない。
主人公は結婚適齢期を過ぎそうな女性(フリーライター)。妻子持ちのかっこいいおじさん(カメラマン)といい関係(いわゆる不倫)を続けている。
この状況に別に不満は持っていないのだが、なぜかぐうぜん知り合った若い男の子ともいい仲になってしまう。
けれど、おじさんが知的で尊敬できる対象であるのに対し、男の子にはいろんな点で不満が出てくる。社会常識的な面でちょっと見下してしまうのである。でも、かわいい。

こういう点には非常に共感できる。私にも思い当たるふしがあるのだ。
知的なひとにも、ちょっと頭の悪そうな娘にも魅力を感じるのである。(みんな好きということかも…)
経験からいえば、後者にはなぜか相手にされなかった。(分析してみたことはないが、頭が悪いので私の魅力に気付かなかったということにしておこう)

読者にいろんなことを考えさせるというのは、よい小説ということになろう。主人公は私とよく似た倫理観の持ち主であるというのが感想。きっと、万智ちゃん(ひとつ上だけど)もね。
最後になったが、ちりばめられた短歌は見事。「こういうのは経験しないと書けないのでは?」と疑ってしまうほどの出来である。

toriangu

November 19, 2005

彫師伊之助捕物覚え

藤沢周平の「消えた女ー彫師伊之助捕物覚え」を読む。
「用心棒日月抄シリーズ」よりトーンは暗め。
主人公の元岡っ引き伊之助は、版木の彫り師の仕事をしながら知人に頼まれた人捜しを始める。
食事や睡眠の時間までも削って。
生活するためには仕事をしていかなければならないからだ。

なぜ、こんなに主人公に共感してしまうだろうと思っていたら、こんな部分に自己投影しているのだろう。
つらくても、食べるためには働いていかなければならない。

October 13, 2005

唸った話

藤沢周平の連作短編「三屋清左衛門残日録」を読んでいるのだが、なかなかよい。特に第4話となる「白い顔」を読んで唸ってしまった。この短編は際だって秀逸だ。
(書かれた)時代が違うのか、私が藤沢作品に最初に接した”隠し剣”シリーズで感じた、暗い印象はまるでない。
謎を含んだ導入から読者に予想が当たった楽しみを与えるオチまでプロットは完璧である。
我々おじさんの”理想”を描いている点も堪えられない。
すべてのおじさんに捧げる名著だと断言したい。

seiemon

October 02, 2005

藤沢周平の用心棒シリーズ

山本周五郎「樅の木は残った」はまたの機会に読むことにして、藤沢周平の「用心棒日月抄」シリーズの2巻”孤剣”と3巻”刺客”を一気読み。このシリーズは、4冊あるそうだが、最後の作品は3冊目から16年後を描いているそうなので、ここで一休みとしよう。
2巻、3巻の中で気になるのは主人公の又八郎と藩の陰の組織「嗅足組」の女・佐知との関係。剣客小説であるにもかかわらず、恋愛小説の要素も内包していると言える。
このあたりの機微がおじさんには堪えられない。抑えた気持ちがはじける瞬間を待ち望みながら読み進めるのである。
全国を見渡すと佐知ファンのおじさんはかなりの数に上るだろう。これが、女性に受け入れられるかは疑問だが…。

※だれか女性の方感想をお寄せください。

September 24, 2005

読書日記 「さぶ」

藤沢周平の用心棒シリーズが読みたくてアマゾンに注文しているのだがまだ届かない。
祝日の午後、三線の練習にも飽き、手持ちぶさたから件の図書館へ行く。
ここは冷房が効いていて気持ちいいのだが、私は寝ころんで読むたちなのでここでは読めない。
借りたのは、またまた文庫本。山本周五郎の「さぶ」である。
(だいたい、図書館に文庫本が大量にあるというところからして、ここは変わっている。そのほとんどが、住民からの寄付らしいのでしかたないか)

恥ずかしながら山本周五郎を読むのは初めてである。
沢木耕太郎や原りょうが勧めるのも頷ける。書き出しから引き込まれてしまった。筋立てと人物描写に隙がない。
連載小説だったそうだが、だらけた部分もなく、(思いもしなかった)謎解きもあり、読了後は満ち足りた気分に浸ることが出来た。私が生まれたときちょうど連載されていたというのはただのぐうぜんでしかない。

主人公の栄二(”さぶ”ではない)の「(人足)寄場での足かけ三年はしゃばでの十年よりためになった」という言葉を、私は「この一冊を読んだ半日が何も読まずに過ごした一週間よりためになった」と言い換えたい。

※今日は職場の先輩N氏に頼まれニコンの望遠ズームとバッグ、双眼鏡をネットで注文する。他人の買い物なのに自分で買ったような気分になり買い物欲が満たされた。

August 28, 2005

読書日記(8月)

1.沢野ひとし 著「一枚の絵葉書」角川文庫
この本は、小旅行、アウトドアスポーツの悪口、登山の思い出、野鳥観察、そして恋愛掌編小説、と五つに分かれている。「だからアウトドアが嫌いだ」と題した部分は世界のすべてにケンカを売っている。自分でもやっているはずの登山や焚き火、バードウオッチングについても言いたい放題悪口を述べている。はっきり言ってむちゃくちゃ。まるで、泉谷しげるみたいである。
そして異質なのは、「恋の行方」と題した恋愛(短編)小説群。私小説風であるが、本人の体験談ではないだろう。しかし、こういうものをすべてフィクションで書くというのもちょっと格好悪いような気がする。少しは、経験が混じっているのではないかと考えるのだが、そうなると、奥さんに…。
それにしても、暗い恋愛話である。もちろん明るい恋愛小説なんて誰も読みたがらないだろうが…。

2.山野井泰史 著「垂直の記憶(岩と雪の7章」)山と渓谷社
壮絶な人生である。
アルパインスタイルのクライマー山野井泰史氏のことを「新潮8月号」を手にするまで知らなかった。
敬愛する沢木耕太郎の文章は端正で客観性をくずさない。(本当はそうではない。よく読めば、ライターの思い入れが見える)
「こんな人生があるなんて」。衝撃を受けた私は、本人の書を手にすることにした。執筆が仕事ではない山野井氏の文章にはつたなく思える部分が多々見られる。しかし、それがリアリティを増加させる。
あえて内容は語るまい。生きる意味について考えさせられてしまった。会うことはできないかもしれないが、私の人生において大切な人がまたひとり増えてしまった。

3.山田詠美 著「Pay Day!!!」新潮文庫
なぜ山田詠美は黒人が好きなのだろう。身体能力?それとも外見?
いや、そうではない。彼女の文章からはそういうことはいっさい感じられない。私の”読む力”は、確かなはずだ。だとしたら、どうして彼女はこんなにこだわるのだろう。
それは本人にも説明がつかないことかもしれない。
今回の主人公は、双子の高校生。それも男の子と女の子。(黒人の父親と白人の母親のハーフ)
端的に言えばふたりの成長物語なのだけれど、背景は重い。
終わり近くまで”ハーモニー”の恋人を白人だと思いこんでしまっていたのは、私の”読む力”が未熟だからだろうか?(たぶんそうだろう)

※めずらしく”書評”をしてしまいましたが、ぜんぜん書評になっていませんね。

August 07, 2005

旅の本

アマゾンに注文した"ポンちゃん"こと山田詠美の文庫は、旅に間に合わないようだ。
発送のメールから中1日で届くので、出発する明日の朝までに届かない可能性が高い。
そこで、本屋に行き物色する。
以前旅行にロバート・ラドラムの上中下巻を持っていったことがある。すっかりはまってしまい、観光もなにもなかったという記憶がある。
それ以来、「旅に持っていくのは軽い本がいい」と考えるようになった。
今回選んだのは、敬愛するミステリ作家原りょう氏のエッセイ「ミステリオーソ」とワニ目のイラストレターこと沢野ひとし氏の「一枚の絵葉書」である。
ミステリオーソには映画やジャズのことが書かれている。以前、単行本を手にしたときはジャズのことがまるでわからなかった。JAZZ初心者となった現在、少しは書かれていることが理解できるようになっているかもしれないと思ったのだ。内容も増補されているらしい。
沢野氏は、どこかもの悲しい文章を書く人という印象を持っている。私にとって気になるひとりなのである。
あと、佐藤正午氏の小説も手にしたのだが、旅に合いそうなものは見つからなかった。(氏の"ジャンプ"は、佐賀への旅行にマッチしそうであるが…。読み返すにはまだ早いようだ)

tabihon

July 19, 2005

百の谷、雪の嶺(2)

わるい予想は、はずれた。
読者に緊張感を与えるためのテクニックだったのだろうか?
いやそうではないだろう。生還したことが奇跡だったのだ。

私が想像したこともない世界がそこにはあった。
山野井泰史氏のことをまったく知らなかった。(氏のプロフィールは、http://www.evernew.co.jp/outdoor/yasushi/yasushi1.htm)
こんな人(夫妻)がいたなんて…。

ギャチュンカン北壁登頂の様子を描く沢木氏の文章は聞き取り取材では得られなリアルさがある。
同氏は以前から対象に極端に接近する手法を取っている。心の内部まで描くためには綿密な取材では限界があると悟っているのだろうか、それとも好きになった人だけを書きたいと思っているのか。(初期のころは嫌いな人も書いている)
いずれにせよ彼の手法は独特だ。彼の書く文章はリアルで優しい。

今日も酔っぱらっているので、これ以上勝手なことをいうのは控えよう。

沢木氏はおそらく一生、山野井夫妻とつき合っていくことだろう。

「最後の”ゴミ拾い”につき合った”男性”は沢木氏に違いない」などと言わないでいいのに、わかった風な口をきくダメな私。

July 18, 2005

気分転換には長すぎる

自宅では沢木耕太郎のノンフィクションを読み始めていたのだが、職場の昼休みには上司の読み古しの「天使の爪」 大沢在昌(著)をもらい、読んでいた。カッパノベルズの上下刊で合計900ページ強。
3連休に入り、(時間もあることだし)気分転換も兼ねてこちらを先に読んでしまうことにした。

どうやら「天使の牙」という物語の続編のようであるが、キチンと説明してあるので、前作を読まずともシチュエーションは理解できる。
いわゆるハード・アクション(サスペンス)というジャンルに分類されるのだろう。”脳移植手術”という非現実的なものをモチーフにしているのだが、うまく書けていると思う。

最後まで飽きさせずに読ませてくれたのだが、気分転換には長すぎた。

July 12, 2005

百の谷、雪の嶺

先日、熊本市内で飲み会があったのだが、少し時間があったので久しぶりに書店に立ち寄った。(最近アマゾンばかりなので)
文芸雑誌コーナーに"沢木耕太郎"の文字を見つけた。新潮の8月号である。(同氏は私のアイドルである)
山野井泰史という実存の(沢木氏はノンフィクションライターなのでとうぜんだが)クライマーの話で、「百の谷、雪の嶺」というタイトルが付いている。

まだ28ページを読んでいるところなのだが、ここまでの文中には死の暗示がちりばめられている。

山野井氏はほんとうに死んでしまうのだろうか?
作家は緊張感を与えるためにこのような表現をしているのか?
”杞憂に過ぎなかった”という結末はないのか?
取り越し苦労であって欲しい。

このような気持ちをもちながら読み進めている。
しかし、予想どおりの結末を迎えるに違いないことを確信していることも事実である。

ちょっと、暗示が過ぎるのではないですか?沢木さん。これでは、読むのがつらいですよ。

June 20, 2005

ピアノの森

先月(だったかな)から週間モーニングで連載が始まった「ピアノの森」というマンガ。
話が途中から始まった。
どうやら別の雑誌で連載されたあと長く休載していたらしい。単行本がすでに9巻出ているそうである。
以前の話を読んでみたいが、単行本の価格は1冊540円。オークションで中古を買っても4千円弱である。これでは送料・振込手数料を加えると新品と変わらない。
アマゾンのマーケットプレイスも調べてみることにする。
やった1冊200円で出ている。でも配送料を調べてみると340円かかってしまい(新品は1500円以上送料無料)、新品と変わらないことになってしまう。

どうにか安く読む方法はないだろうか。
そうだ、マンガ喫茶という手がある。近くの町にあったはずだ。
さっそく調べてみる。ところが、どうも想像していたものと違うのである。
店にいる時間に対して料金を支払うシステムになっているらしい。
私は読むのが速いので買うより得しそうな気がするが、もし1冊読むのに2時間かかってしまったとしたら…。これまた本が買えそうである。
うーんどうしよう。

※毎週マンガ喫茶に行っている医者のKさん。アドバイスをお願いします。

piano

May 06, 2005

流転の海

最近小説を読んでいなかったので、ちょっとごついものが読みたくなった。
手にしたのは、宮本輝「流転の海」。

ところで、私の読書はほとんど就寝前の床の中である。本がおもしろいと困ったことになる。
最後まで読み続けてしまうのである。結局3時半まで読んでしまった。

(で、本の話ですが、時間がないので、仕事から帰ってから書くことにいたしましょう)

March 26, 2005

アーサー・ランサム全集

ヤフーオークションのキーワード・アラートにアーサーランサム全集(岩波書店・全12巻)がかかった。
入札する前に念のためアマゾンを確認してみたらなんと2月に復刊されているそうではないか。
子どものころにはまっていて、ずっと主人公の少年・少女らにあこがれていた。
イギリスの湖沼地帯が舞台で、子どもらが小さな帆船で冒険する話である。(小さなカヌーを買ったのもこの影響です)
大人になり1冊ずつ買い揃えようと考えたが、3巻まで買ったところで手に入らなくなってしまった。
絶版となるとオークションでも高いが、なんとか全集を手に入れたいとずっと思っていた。
復刊されたものは1冊2500円から2700円ほど。また絶版になる前に今度こそ全部揃えなければならない。

February 16, 2005

江分利満氏の優雅な生活

「江分利満氏の優雅な生活」山口瞳著・新潮文庫を読む。
時代はかなり古い。昭和20年〜30年代の物語である。主人公はたぶん著者の分身なのであろう。
貧しくもけなげに生きる姿は、なんとももの悲しい。しかし、そこにはたしかに幸せがある。
人生において何が大切で何が幸せなのかを考えさせられてしまった。

とても印象に残る本であったが、読み返す気にならないのは何故だろう。

数日後、出張中の電車で奥田民生のアルバム「股旅」を聴く。(もちろんiPodで)
「さすらい」と「イージュー☆ライダー」でエブリ氏のことを思い出す。
彼もまた、小さな幸せの大切さがわかっているのにさすらってしまうのである。

「さすらいもしないで〜。このまま死なねーぞー」

January 01, 2005

そして夜は蘇る

正月休みを利用して原りょうの既刊を読み返すことにした。

まずはデビュー作「そして夜は蘇る」。
この物語では、40歳の沢崎に会える。
そして、私がハードボイルドに必須だと考える魅力的な女性たちにも会うことができる。
特に魅力的なのは依頼人である佐伯名緒子。
しかし、結婚前に彼女が取った行動(それに伴う思考)を理解するのは難しい。(原さんは女心というものがわかる人なのでしょう)
主人公である探偵、沢崎は彼女の魅力を十分に理解している。
その佐伯名緒子に沢崎は寄りかかられ、「あなたのところへ連れて行って」などと言われるのである。
探偵がとった行動は…。
やはり「やせ我慢」である。
そう、ハードボイルド小説とは”ええカッコしい”の物語なのである。
据え膳は食わぬのである。

私はそういうチャンスに恵まれないので、なってみないとわからないが、たぶん(沢崎のような行動は)無理なのでないかと思う41歳の元旦なのであった。

※正月早々かなり酔っぱらっています。これから「私が殺した少女」を読むことにいたしましょう。

November 21, 2004

らもチチ?

講談社文庫の新刊広告に「らもチチわたしの半生 青春篇 」「らもチチわたしの半生 中年篇 」という2冊の本を見つけた。
こ、これってもしかして、中島らもさんとチチ松村さんのコラボ。
やっぱりそう。これは即買いしかない。さっそくアマゾンに注文だ!

と、ここで問題が…。2冊960円では送料が無料にならないのだ。(合計1500円以上が送料無料)
私は昨日、エプソンのプリンタインク(黒とカラーそれぞれ2個組)と藤沢周平と山口瞳の文庫を注文していた。当面必要なものは、もう購入済みなのだ。矢野顕子の新譜も買ったし…。

さて、あと540円分何を買おうかと思いながらもう三日も経つのである。

October 22, 2004

インターバル

新宿鮫シリーズで知られるハードボイルド作家、大沢在昌の短編集に「深夜曲馬団(ミッドナイトサーカス」というのがある。
中の1編「インターバル」が心に残っている。

男は空き家になって久しい自らが育った家を訪ね、少しずつなまった体を鍛えていく。何のためにやるのか…。

ジョギング4日目に、この短編のことを思い出した。

September 18, 2004

沢木耕太郎と村上龍(2)

いろんな人のコメントを読みましたが、ここ(http://honsumi.net/modules/news/article.php?storyid=346)に書いている人の”読み”は特に鋭いですね。
両者の本質をよくとらえていると思います。
私には逆立ちしても書けない文章です。はっきり言って才能がうらやましいです。
でもこんな(才能を持った)人、たくさんいるんだろうなー。

August 09, 2004

新興宗教の暗

「ガラダの豚」中島らも著、集英社文庫(全3巻)を読み返した。
以前から新興宗教の手口に憤りを感じていた私にとって1巻の内容は痛快そのものと言っていい。
最初に読んだ時は、知人が”タイドー”と”ホウノハナ”の被害に遭っていた。
どんなに「あなたは騙されている」と言っても無駄だとはなからあきらめてしまい、自分の無力さと相手の愚かさに腹を立てていたのを思い出す。
教祖が見せる奇跡をはなから疑ってかかり、トリックを破るマジシャン「ミラクル」に共感を覚えた。
そして、本当に正義感を持っていたのであれば、救えたかもしれないと私に考えさせるのである。

2巻に入ると物語は舞台をアフリカに移し、話は真に邪悪なものとの戦いに移っていく。
知らない世界をかいま見ることができ、またオチが意外(予想はできたが)で、一気に読ませた。(オチを予想させるのも書き手のうまさだと思います)

3巻は少し甘いと思う。死人の山が築かれていくことになるのである。
この巻は、スリラー小説にしか見えないとも言える。しかし、いちおうこれまでの話をまとめてはいる。

読者は1巻で止めても、2巻で止めてもいいような気もする。2巻の奥深さから比べ、3巻はやや尻すぼみという印象を持ってしまったのだ。

しかし、3巻の弱さを差し引いてもこの小説が傑作であることにくもりはない。
あまりけなすと”らもさんの霊”に祟られそうで怖いし…。(これは冗談です)

August 07, 2004

最近の音楽と本

お酒は欠かさないが、本と音楽は欠かしがち。
でも、欠かさないよう努力している。
本は椎名誠に続いて、中島らものエッセイ(?)「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」を読んだ。
現在は大作「ガラダの豚」を読み返している。まだ読み始めたばかりだが、らもさんの才能はやはりすごい。
CDは、ボブ・ジェームスのライブ版「All Around the Town」と細野春臣のソロ第1作(?)「Hosono House」を購入した。前者は初期のベスト盤みたいな選曲でとてもよろしい。(私はライブ版が好きなのだ)
後者はこれからじっくり聴くところだが、結構はまりそうな気がしている。

July 28, 2004

中島らも死す

中島らも氏が亡くなったとテレビニュースが告げた。
氏の作品は「今夜、すべてのバーで」と「ガラダの豚」ほか数作品しか読んでいない。
特にこの2作品は記憶に残っている。テーマは前作がアル中、後作が宗教である。
以前から宗教の魅力について興味を持っていたので「ガラダの豚」の何とも言えない暗さ、宗教に傾倒していく人間の弱さと常識を超越した邪悪なものの存在についての描写に唸ってしまった。
池波正太郎、阿佐田哲也(色川武大)、樋口修吉、中島らも…。わたしの好きな作家がどんどん死んでいく。
ディック・フランシスも、もう書かないそうなので死んだも同然である。

May 14, 2004

沢木耕太郎のこと

ノンフィクションライター沢木耕太郎は私のアイドルだ。
しかし、歳をとるごとに「彼の清廉さは作られたものではないだろうか」という思いが芽ばえてきた。
彼の著作に性的な描写は全くと言ってよいほどない。20代のころ約1年かけてユーラシア大陸をバスで横断した、「深夜特急」でも彼はストイックさを貫き通す。
それに、彼の文章はあまりに整いすぎている。これも、聖人君子的なイメージを持ってしまう要因だ。

そんな沢木耕太郎によるアトランタ・オリンピックと日韓ワールドカップ(サッカー)に関する2冊の本が、先般、朝日新聞社から(タイミングを大きく外して)出版された。

2冊を読んで、私は感じた。文章が少し荒くなってきている。それに、客観的に見て、分析・判断するのがノンフィクションなのだと思うのだが、個人の好き嫌いともとられるような主観が結構入っている。

そこで、こういう言い訳をしてみる。この2冊はノンフィクションではなく素人による観戦記なのかもしれない、と。
しかし中には、スポーツ評論家たちによる使い古された(紋切り型)表現とはあきらかに違う的確で初々しい表現と素直な感情があふれていた。
そして、けっしてつくられたものではないとわかる優しい視点は、変わらず存在しているのであった。

やはり沢木耕太郎は私のアイドルである。

今日の本:「週間モーニング」(講談社)、「かつて白い海で戦った」沢木耕太郎著(沢木耕太郎ノンフィクション第5巻。文藝春秋刊)
今日のお酒:キリン淡麗、龍宮、カナディアンクラブ(加・カナディアンウイスキー)

May 11, 2004

男の作法、女の作法

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写真の二冊は、池波正太郎著「男の作法」新潮文庫。
正確には、語りかけを文章に起こしたものなので、著作とは言えないような気がする。相手は、若い編集者か、弟子のような存在の人らしい。
どうして二冊あるかというのが本日のハナシである。
奥付を見ると、くたびれた方は、「昭和六十年六月十日・五刷」とある。当時愛読していた「週間プレイボーイ」の文芸欄(?)で勧めていたので購入したと記憶している。(当時は大学生でした)
内容に唸り、以来、一部を実践しながらかっこいい大人になるべく努めてきた。
「昼食代を節約してでも一流の店に行って本物を知るべき」「高価な腕時計より高級な万年筆を持て」など一つひとつにうなずいたものだ。端的には「お金は自分を磨くために使うべきであり、飾るために使うべきではない」と池波さんは言っている。つまり、この本は「男の作法」ではなく、「大人の作法」なのだ。ぼろぼろになるまで何度も読み返した。
この本を私は、これから就職しようとする女の子に数冊の本とともに貸した。そして、返してもらうときにこれから社会人となる彼女に、はなむけとしてプレゼントしようと、新しいものを買った。
「“かっこいいおじさん”と思われるかもしれない」という下心的気持ちがあったかもしれない。そういうかっこいい大人をめざせと池波さんは言っているような気がした。
数日後、「どうだった」と感想を問う私に返ってきた答えは…。
「これって男の人のための本じゃないですか?」
「……。」
結局渡しそびれてしまった。
そういうわけで二冊あるのである。

本日のお酒:龍宮(黒糖焼酎)+アーリー・タイムス(米・バーボン)